リアホナ 2005年4月号 スペシャルオリンピックス長野大会を支援した教会のボランティアたち

    News Box  スペシャルオリンピックス長野大会を支援した教会のボランティアたち

    世界8 4 の国や地域から知的障害のある選手たち約2,600人が参加した,スペシャルオリンピックス(SO)冬季世界大会が,3月5日に閉幕した。アジアで初めて開かれた世界大会として,SO独自のフロアホッケーなど7競技79種目が8日間にわたって行われた。長野市,志賀高原,野沢温泉村,白馬村,牟礼村の会場には約9万人が観戦に訪れた。大会期間を通じて参加したボランティアは約8,000人,教会からは50人のボランティアが参加した。

    教会員のボランティアの窓口となったデビッド・岩浅兄弟(東京ステーク/渋谷ワード)はカナダチームのアシスタントとして常駐した。妻のジェーン姉妹と夫婦で参加した岩浅兄弟は,出身国のカナダの選手とはすぐに意気投合し,気持ちを通わせることができたという。岩浅ご夫妻はいつも選手一人一人に愛情深く接して大会期間を過ごした。

    「彼らは,このオリンピックで競技に参加することに誇りを感じています。わたしも毎日感動の連続です。すべての競技に感動しています。メダルをもらった選手はもちろん喜んでいますが,参加したすべての選手が,それぞれの記録に挑戦して喜びを感じています。自分の持つ記録を上回れば喜びますし,最後までできただけでも喜びます。それぞれが世界記録を出したように喜んでいます。」

    また岩浅兄弟は,様々な形で参加した教会員のボランティアに対しても感謝の気持ちであふれている。「教会員の方々にはとても感謝していますし,一生懸命働いている一人一人に心から感動しています。」

    内山雅亘兄弟(武蔵野ステーク/杉並ワード)は野沢温泉村会場のインフォメーションセンターで働いた。「何でも質問を受けるのがわたしの仕事です」と話す。「選手や一般の方々と毎日接します。想像した以上に楽しい仕事です。特に年齢の違った人であってもみんなが仲良く働いていますから,楽しいの一言に尽きます。社会のために貢献したいという思いもあり,教会でもボランティアを募集していることを知り応募しました。8日間休みを取るのは大変なことでしたが,かけがえのない経験になりました。」

    内山兄弟は会場だけではなく,会場以外の場所でも「もう一つの戦い」が繰り広げられていると話す。

    「一人の少年がバスに乗ろうとしたとき,体が不自由なため,なかなかステップを上ることができませんでした。周りの仲間は一生懸命応援しますが,だれも手を貸しません。ステップを上り切るまで数分を必要としましたが,その少年は自分の力でやり抜きました。上り切ると,仲間たちが少年と強い握手を交わしていました。歓声もわき起こりました。自分でやれるということを少年が知ることができた瞬間に立ち会い,見ていたわたしも感動しました。このような光景がいろいろな所で見られます。」

    そんな内山兄弟が唯一後悔していることは,「尋ねられる人にモルモン書を渡していましたが,数が足りなかった」ということらしい。親しくなったスタッフと自身の哲学について話し,信仰について紹介する機会も多い。何人かにモルモン書を贈ったが,数が足りないので帰京してから送る約束をしていると話す。

    地元の会員・宣教師たち

    地元の長野支部の教会員と宣教師はシャトルバスのターミナルでボランティア活動に従事した。

    「とにかくたくさんの人と話します。伝道しているよりもたくさんの人と話します。わたしたちが何をしている者なのかいつも尋ねられます。ですから,自転車に乗っている宣教師と説明すると皆さんすぐに分かってくれます。」ブラジル出身のベリーゼ長老は話す。普段は松本で伝道しているが,オリンピック期間はボランティアとして寒さに震えながら奉仕している。

    長野支部で働くボーエン長老も同じような質問を毎日受けるという。「まず,たくさんの日本人から,なぜ日本にいるのか尋ねられます。何度も聞かれるので宣教師であることを話します。次に活動内容について尋ねられますので,伝道について話します。また,外国人からも同じように尋ねられます。1年以上も日本にいることを話すと,だれもが驚いて理由を尋ねます。毎日がその繰り返しです。」

    朝7時から夜10時まで寒風のターミナルで働く宣教師たちは,「自分たちが何をしているのかこんなに尋ねられたことはありません」と楽しげに笑う。

    ともに働く長野支部の山口啓輔支部長は「長野支部からは12人が参加しています。ローテーションを組んでそれぞれが奉仕しています。また,求道者の方も一緒に参加しています。わたしたちにとってはとても貴重な経験になっています」と語る。バスターミナルでは,宣教師や会員の調整役,また一般の日本人ボランティアとの交流も深めながら活躍している。

    様々なボランティアの現場にて

    宮城晴亮兄弟(東京ステーク/渋谷ワード)が働く野沢温泉村のファミリーセンターには,途絶えることなく各国の選手の家族や関係者が訪れる。しかし,あまり区別がないため,「入ってくる人はだれでも受け入れています」と話す。「通訳がわたしの仕事ですが,特にそれだけに限らず,いろいろな形で訪問者を歓迎しています。部屋の中は暖かいので,いろんな人が来るんですよ」と笑顔で話す。様々な言葉が飛び交う中,宮城兄弟も訪問者の中を飛び回りながら,優しく対応している。「ここにはいつもいろんな人が来ますが,とてもすばらしい経験になっています。仕事を休んで来た価値がありました」と感想を述べる。

    現地の言葉をだれも通訳できないセルビア・モンテネグロの選手団では,岩本奈緒美姉妹(大阪北ステーク/茨木ワード)がアシスタントとして仕事を任されている。コロラドで伝道した彼女は英語で意思の疎通を図っている。岩本姉妹の仕事は「DAL」と呼ばれ,団長やコーチと行動を共にしながらサポートを行う。大学で勉強したフランス語が役に立つときもあるが,ほとんどのコミュニケーションは英語で行われる。「最初は助けなければならないことが多かったのですが,今は彼らも手順が分かりましたので楽になりました。彼らの言葉が話せればもっと仲良くなれるかもしれませんが,分からないときはジェスチャーです。」

    参加した理由を「姉に勧められたから」と話すが,ボランティア活動を振り返り「予想以上に楽しかった」と語る。「事前の説明会ではとても大変な仕事のように言われていたのですが,ストレスもなく,順調にこなすことができました。わたしが働く志賀高原は長野市の会場からは隔離されていますので,その反面,滞在しているスタッフとは随分と仲良くなりました。いろんな人と話す機会があり,すばらしい経験の連続です。」唯一辛かったことは「食事が洋食ばかりだったこと」だけだと言う。

    ボランティアに参加した教会員はだれもが「楽しい」の言葉を繰り返す。それ以上に適した言葉が見当たらないのだと話す。

    参加に当たって後ろ髪引かれる思いで現地入りした人もいる。池田和政兄弟(千葉ステーク/成田ワード)がその一人かもしれない。池田兄弟は長野へ出発する直前に監督の召しを受けた。「ワードの会員の皆さんに申し訳ない」と話すが,ボランティアに参加したことには深い意味があるようにも感じると語る。

    「どうして長野へ来る直前に忙しい監督職に召されたのかについて,祈りました。そして彼らと過ごした中で,答えを受けた気がします。キプロスの選手団のアシスタントとして働くことが,監督としての『導入研修』になっているという事に気づきました。御存じのように知的障害者の行動パターンは未知数です。年齢もわたしが担当しているキプロス選手団は,18歳から47歳まで様々。知的レベルも多種多様です。そのような彼らを『団長付き代表ボランティア』としてお世話をすることは,ある意味,様々な信仰のレベルや価値観を持つ人々と接する監督業務に似ているかもしれません。決して自分が備えられて監督になったと言うつもりはありませんが,このボランティア登録を教会から勧められた昨年の夏には,もう天ではわたしが監督になる準備が進められていたのだとさえ感じました。」

    池田兄弟は長野でのボランティアの日々を「天国で働いているかのように愛に満たされた日々」と表現する。「重荷も,プレッシャーもなく,ただ,彼らとともに日々の目的を粛々と果たしています。実に,粛々と時が過ぎて行くのです。不思議な心持ちのする空間です。霊性の高い彼らと過ごし,特別な気持ちを感ぜずにおれないのでしょう。」キプロスの選手団長は,池田兄弟を「わたしたちのチームの心の一部」と強い思いを込めて表現する。

    教会員のボランティアだけではなく,参加しただれもが一様に「すばらしい経験」と顔をほころばせるスペシャルオリンピックス。次回は更に多くの会員がボランティアとして参加することが予想される。次の世界大会は2007年に中国の上海で夏季大会が開催され,冬季世界大会は2009年にボスニア・ヘルツェゴビナで開催される。

    閉会式でSO日本の細川佳代子理事長は「本当の成果が問われるのはこれからです。明日から新たな一歩を踏み出しましょう」と話した。教会とスペシャルオリンピックスの関係者にとっても,ともに連携の一歩を踏み出した記念する大会となった。来年の夏には熊本で日本のSO国内大会も予定され,10,000人のボランティア動員を目指している。教会でもすでにボランティア協力の準備が始められている。◆