リアホナ2015年1月号 Paying It Forward(無償の愛を受け継いで)

    Paying It Forward(無償の愛を受け継いで)

     優勝スピーチ(日本語訳)吉永 汐里さん

    わたしには心の奥に大切にしまっている言葉があります。「無償の愛」です。今までは考えてもみませんでしたが,わたしはつい最近体験したことから,その言葉の本当の意味を学びました。今なら,多くの人にとってそれが大切なものであると分かるのです。

    3 年前,わたしの二人の兄は大学に通うために引っ越し,一人暮らしを始めました。両親もわたしも賛成し,兄たちを応援しました。しかし,わたしはすぐに寂しくなってしまいました。ある日,耐えられなくなったわたしはつぶやきました。「お兄さんたちが恋しい。いますぐに会いたい。」母は頷き言いました。「わたしもよ。」その声は弱々しく,顔色もよくありませんでした。母はいつも気丈にふるまう人だったので,わたしはそのとき本当に驚きました。母は掃除も炊事も仕事もこなし,不満を言ったり弱さを見せたりすることさえなかったのです。このあと,時折母は疲れ切った顔をするようになりました。わたしは,母が歳とともに,精神的にも身体的にも弱くなっているのだと気づきました。

    わたしは,これより以前に,将来について考え,志望大学を決めていました。その大学は,兄二人と同じように家から遠いところにありました。この進路について相談したとき,母は良い決断だと言ってくれていました。しかし,わたしは,自分が本当に正しい選択をしているのかと迷い始めました。わたしの父は仕事で忙しく,出張にもよく行きました。しかし母の心遣いのおかげで,わたしは寂しさを感じたことがありませんでした。わたしはそのことに本当に感謝をし,母を大切に思っていました。だから,わたしは恩返しをする時が来たのだと感じました。

    志望大学には本当に行きたかったけれど,母のために決断をしました。わたしは母のもとに行き,よく考えて家から通える大学を受験することにしたと言いました。母と一緒にいて,病気になったら看病をし,心細い思いをさせないようにしたいのだと。

    しかし,それはだめと母は言いました。そして,わたしのために夢をあきらめないでと続けました。

    わたしは,これまでたくさんのものを母から貰ってきたこと,そして恩返しがしたいと思っていることを精いっぱい話しました。

    母は優しく微笑みました。「そんなこと必要ないわ。親は子供に無償の愛を与えるものなの。わたしに恩返しをしようなんて思わなくて良いのよ。でも,本当にそんな風に思ってくれているなら,将来あなたの子供に,あなたがわたしから受け取ったものをあげてちょうだい。それで十分よ。」

    わたしは胸がいっぱいになり,母の愛がどれだけ深いものなのか悟りました。

    いまも,わたしは母のためにできることはすべてしたいと思っています。でも,本当のわたしの「恩返し」は将来の子供のために取ってあるのです。母が惜しみない愛情を注いでくれたから,わたしは将来同じことができるでしょう。本当の家族とは,ただの血縁関係ではなく,絶つことのできないきずなを持った人たちなのです。そして,そのきずなが,無償の愛を次の世代へと受け継いで行くのです。◆