リアホナ2009年7月号 アジア北地域会長,デビッド・F・エバンズ長老ご夫妻インタビュー

    ●アジア北地域会長,デビッド・F・エバンズ長老ご夫妻インタビュー

    会員一人一人が御霊みたまに感じて行う,愛の働き──再活発化……日本の教会発展の鍵

    デビッド・F・エバンズ長老が日本伝道部の専任宣教師として初めて日本の土を踏んだのは1970年のことであった。1998年から2001年までは名古屋伝道部の会長として再来日する。2005年には七十人第一定員会に召され,アジア北地域会長会の顧問として三たび来日,2006年には地域会長に召された。今日までエバンズ長老は通算9年間,メアリー姉妹は名古屋時代から通算7年間を日本で過ごしてきた。今回,アジア北地域を離任するに当たり,エバンズご夫妻の日本に寄せる思いを伺った。

    子供と日本で過ごした日々

    メアリー姉妹は,伝道部会長夫人として初めて名古屋に来たときのことをこう振り返る。「伝道本部の窓から見ると建物ばかりで,迷子になりそうでした。ソルトレーク・シティーには山があるので,いつもどちらに向かっているか分かるのですけれど。日本語が分からないのがいちばん怖いことでした。3年間,伝道本部にずっと閉じこもっていようかと思いました(笑)。」エバンズ長老も言い添える。「妻には名古屋に親しい友達もいない,日本語もできない,買い物の仕方も分からない,運転免許も車もないということで,最初の1,2か月は正直,難しかったと思います。」

    けれどもいちばん下の二人の男の子は物おじせず,すぐに近所を探検に出かけては母親に報告してくれた。近所の子と野球に興じ,インターナショナルスクールではなく,あえて地元の公立小学校に行きたいと言った。学校側に打診すると,英語のできる職員はいないにもかかわらず,ほんとうに親切に受け入れてくれた。学校の友達もたくさんできた。エバンズご夫妻が宣教師と伝道本部に帰ってくると,家の前にたくさんの──時には15台もの自転車が並んでいることもあった。メアリー姉妹はこう振り返る。「彼らはいつも日本人の友達と遊んで,楽しく日本文化について学んでいました。子供たちが日本の地域になじんだのは家族にとってすばらしい経験でした。名東ワードの会員たちも日本の学校について教えてくださり,たくさん助けてくださいました。学校が始まる日,一人の姉妹が小さなバッグを下さいました。給食ナプキンと箸入れを頂いたんです。」子育てを通じてメアリー姉妹もまた日本社会に触れ,教会内外に友人が増えていった。

    子育てに喜びと楽しみを

    「かつてゴードン・B・ヒンクレー大管長が中央幹部を集めて教えたとき,このように勧められました。『総大会が終わってこれから全世界に出て行きますけれど,それぞれの場所でこう勧めてください。教会の活動,教会の雰囲気の中に,もう少し喜びと楽しみを入れましょう,と。義務だけではなく,責任だけではなく,もう少し互いに楽しむことができるようにしましょう。』

    わたしがあるステーク会長にそれを伝えたとき,彼はこのように言いました。『エバンズ長老,日本の教会員は多分,どう楽しめばよいかを忘れてしまったと思うんです。』(笑)……もちろん日本社会の生活は忙しいと思いますけれど,互いに楽しみをもう少し,教会の活動の中に,家族の中に入れましょう。子供たちともう少し,正しい楽しみの経験ができたら──それを忘れずに,日本のすばらしい育て方を続けるならば,祝福を受けるとわたしは感じています。やってみていただきたいですね。」

    伝道の目的とほんとうの喜び

    エバンズ長老は1970年の暮れ,新宿駅から国鉄中央線に乗って最初の任地である長野県松本市へと向かった。「いちばん最初の印象は,日本人がたくさんいるということでした。」新宿駅の雑踏を目にしてエバンズ長老は驚く。ソルトレーク・シティーではこんなに人が群れているのを見たことがなかったからだ。松本に着いてからは,会員たちの親切さが印象深かった。日本語を覚えるのはずいぶんと難しく,着任して2週間たっても聖餐会での日本語をまったく理解できなかったときは,涙を流して主の助けを願い求めた。松本でのほんとうに寒い最初の冬を越え,早春に甲府へ転任する。「わたしは先輩宣教師になりました。同僚も日本語ができなかったのですが,二人で頑張ってたくさんの成功を見ることができました。甲府でわたしは成長し,主がおられることを知ることができました。主の助け,主の恵みを同僚たちと味わうことができました。それから葡萄もおいしかった(笑)。すばらしい夏でした。その秋には静岡に転任しました。」

    エバンズ長老は,当時福音を伝えた幾つかの家族を,今も深く愛している。最近,東京神殿に参入したとき,儀式を施してくれたのはかつてエバンズ長老がバプテスマを施した静岡の兄弟であった。「二人で(儀式を)しながら,泣いていました。ほんとうの喜びを感じることができました。」

    「伝道の目的は,バプテスマを施すことだけではなく,彼らが活発で,神殿で結婚し,教会で召しを果たし,彼らの子供たちにも同じ祝福が与えられることです。今のわたしにとって大切なことは,わたしと同僚たちからバプテスマを受けた人々の家族を見ることです。神殿で結ばれた家族が幾つもあり,彼らの子供たちが今,伝道に出て帰還しています。あと15年もすれば彼らの孫も……。3つの世代が結ばれていきます。ほんとうにすばらしいことです。

    残念なことに,わたしたちから福音を聞いた何人かの兄弟たちは今,活発ではありません。彼らを見つけて助けることができればと,毎日,祈って考えています。」

    家族の外に愛の手を差し伸べる

    日本の姉妹たちにメッセージがありますか? と水を向けると,エバンズ姉妹は即答する。「もちろんあります。わたしは日本の女性はすばらしいと思います。彼女たちは強く,ほんとうに家族に献身しています。良き母であり,深い繊細な気持ちを感じることができます。わたしは,アドバイスということではなく,お勧めとして,日本の姉妹たちを励ましたいのです。それは,家族への献身的な愛と働きを,家族の外に広げていく(Reach out beyond your family),ということです。今,教会から足の遠のいている方々,あるいは新会員や求道者の方々に,教会の女性たちは多くのことができます。教会の中に友人がいなくて寂しい,そういう気持ちに,日本人の姉妹はすばらしい働きができています。またご主人や子供たちが家族の外にリーチアウトするのを励ますことも大切な役割です。

    その方法を教えてくださった日本人女性がいました。20年前にわたしたちの長男が日本での伝道を終えたので,家族で迎えに来て,日曜日,彼が伝道した支部を訪問したのです。たくさんの人たちが,長男にさよならを言うため支部に集ってくださいましたが,そこに,3人の10代のお子さんを持つ姉妹がおられました。彼女は,教会に入って来る人々を見て,彼らが求道者だったり,しばらく足の遠のいていた求道者や会員だったりすると,自分と子供たちがその人のそばに必ず座るようにしていたんです。母親として子供たちに,その人たちを迎えるということ,教会で孤独を感じる人がいてはいけないということを教えていたんですよ。すばらしい模範です。」

    あなたは最近,だれを救助しましたか?

    エバンズ長老も姉妹に強く同意する。「周りにほんとうの愛,ほんとうの関心を示すのは非常に大切です。『わたしは,新しいいましめをあなたがたに与える,……わたしがあなたがたを愛したように,あなたがたも互に愛し合いなさい。……それによって,あなたがたがわたしの弟子であることを,すべての者が認めるであろう。』(ヨハネ13:34-35)その姉妹がしてくださったことは,ただ,この聖句に書いてあることなんですね。組織よりも,あるいはプログラムとか,ポリシー(方針,規定)よりも,まずこれをしなければならないと思います。わたしたちがそれをするならば,それぞれのほかの問題や困難は解決されるとわたしは固く信じています。

    わたしがステーク会長になったとき,ジェームズ・E・ファウスト管長がステーク大会を訪問されました。彼はそのとき,このステークを発展させるためには何から始めたらいいか,というわたしの質問に答えてくれました。『最初に,かつて活発であったわたしたちの愛する兄弟姉妹たちを助ける働きをしましょう。それから,伝道などの他の活動をしましょう。』──わたしはステーク会長として,その点をほんとうに頑張りました。それを通してステークが元気になりました。何人もが教会に戻りました。伝道もうまくいくようになりました。

    アルマ書の31章でアルマは,ゾーラム人に対する働き,つまり再活発化の働きをする前に祈りました。『まことに,おお,主よ,彼らは貴い人々であり,その多くはわたしたちの同胞(our brethren)です。ですから,おお,主よ,わたしたちが同胞であるこれらの人々を再びあなたのみもとに連れ戻すことができるように,わたしたちに力と知恵をお与えください。』(アルマ31:35)でも英語の聖典を読みましたら,同胞というより親戚という感じがします。日本の教会はまさにそうだと思います。わたしたちのほとんどの家族──その貴い,愛されている子供たちやあるいは両親,きょうだいたち── の中に今,福音を味わっていない兄弟姉妹がいるのです。

    先日あるステークを訪問したときわたしは,『ステークにYSAは何人いますか?』と尋ねました。ステーク会長会の顧問が答えました。『活発会員が60人です。』『では遠のいている会員は何人くらい?』『知りません。活発会員たちを守るためにわたしたちのすべての時間を使っているので,遠のいている会員たちにあまり働きかけていないのです。』──その考え方を変えなければならないと思います。

    (この4月の総大会の際,中央幹部を集めて)モンソン大管長はわたしたちに一つの主の御言葉だけ教えてくださいました。

    『……ある人に百匹の羊があり,その中の一匹が迷い出たとすれば,九十九匹を山に残しておいて,その迷い出ている羊を捜しに出かけないであろうか。

    もしそれを見つけたなら,よく聞きなさい,迷わないでいる九十九匹のためよりも,むしろその一匹のために喜ぶであろう。』(マタイ18:12-13)──これが預言者の深い思いであり,それは主の御心であることをすぐ見分けられると思います。

    だから教会を今より発展させるために一つの提案をするなら,それは,再活発化の働きを,賢く,一所懸命していただきたいということです。それを通して様々な伝道の機会も出てくるでしょう。多くの家族は神殿まで行くでしょう。いろいろな祝福が与えられます。またもしわたしたちがその働きをしなければ,だれがしてくれるのでしょう。モンソン大管長の,中央幹部に対するいちばん最後の質問はこれでした。『あなたはだれを最近──以前にではなく,最近・・── 救助(rescue)しましたか?』……痛い質問ですよね(笑)。」

    ベドナー長老の助言に従って

    「日本の教会がほんとうに発展,成長するために,わたしたちはもっと再活発化の働きをしなければならないと思います。モンソン大管長は今,それを強く勧めています。また,ただ聞くだけの人になるのではなく,一人一人がそれを自分で行うよう,ほんとうにわたしは勧めたいと思います。それが,日本の教会が次のステップへ進むための鍵だと思います。今,教会から足の遠のいている会員たちは,何千人もの宣教師たちの働きが残したものなのです。

    ベドナー長老が3年前の秋の総大会で再活発化についてこう言われました。『どうぞよく祈って,あなたが訪問しようと思う人を選び,もう一度礼拝をともにすることを勧めてください。』(デビッド・A・ベドナー「何ものも彼らをつまずかせることはできません」『リアホナ』2006年11月号,89)」

    エバンズ長老がそれについて祈っていると,ある高校生の少年の名前が心に浮かんできた。彼はかつてエバンズ長老がバプテスマを施した兄弟の息子で,家族ぐるみの付き合いがあり,以前は福音に忠実であった。「けれども高校生になって,音楽,友達,ガールフレンド,学校……いろいろな影響があって,そのころ教会から足が遠のいていました。わたしは(御霊の促しに従い,)彼を招待しました。

    しかし非常に不安でした。失敗したくなかったのです。若い人と話すことにも自信がありません。……考えてみてください,そのときわたしは地域会長だったので,わたしが普段会っているのはほとんどが活発な会員たちでした。どう話せばいいのか全然,分かりません。

    でも彼は招待に応じてやって来てくれました。奇跡です。彼と会ったとき,ほんとうにどう言えばいいか分からなかったので,あまり気の利いたことは言えなかった,ただ,『お腹がすいた?』……多分,伝道に行きなさいと言われると思っていた彼は(面食らって),『あ,はい,すいてる。』(笑)

    ── そしてそれから1時間半くらい,彼はたくさん食べながら,心のすべてを自然に伝えてくれました。わたしは話すよりもただ聞きました。

    最後にわたしは彼にこのように勧めました。『あなたは,この福音を捨てられないと思いますよ。若いころから福音が真実だと分かっていて,いろいろなところで御霊を感じたことがあるのですから。いつか,戻りたくなります。そのときにわたし助けたいと思っています。だから今晩,勧めたいことは一つだけ。今晩から(教会に戻りたいと思う)そのときまで,大きな罪,大きな失敗を犯さないように。あなたには伝道も待っているし,主が与えようとしているたくさんの祝福が待っています。だからわたしは待ちます。』わたしたちは,そんな温かい気持ちで別れました。

    それからほどなく,彼の地元でステーク大会があり,地域会長会の高元龍長老が割り当てを受けてステークを訪問しました。ステーク会長は彼の両親に,土曜日の部会が終わった後,高長老と姉妹を地元の名所へ案内するよう頼みました。高長老ご夫妻は彼の両親の車に乗りました。それがもう一つの奇跡の始まりでした。

    彼は土曜日の夜の部会に自分からやって来たのです。また独りで逃げるのではなく,彼は高長老姉妹,両親と一緒に車に乗りました。高長老はわたしと彼との間の経緯を何も知らず,ただ聞きました。『あなたはいつ,伝道に行くの?』彼は少し恥ずかしくなり,ちょっと分からない,というふうに答えました。けれどもその晩,彼はあまり眠れなかったのです。

    次の朝,彼は大会の前にステークセンターまで来ました。高長老がステークセンターに着いたとき,彼は,高長老と話したいと言いました。ステーク会長は高長老を守るために,いやいや忙しいから,と……。でも高長老は彼の顔を見て,許してくれました。彼はこのように言いました。『昨晩,あまり眠れませんでした。── ぼくは伝道に行く。時間がかかるかもしれませんけど,ぼくは伝道に行きます。両親には話さないでください。』」── ここまで語ってエバンズ長老は涙に声を詰まらせる。

    小さなことから大きなことが生じる

    「時間はかかりました,やはり。ガールフレンドの改宗などいろいろありました。でも今,彼は伝道に出てそろそろ1年半がたとうとしています。信じられないね。(笑)

    それはわたしの働きではなかったんですよ。わたしは彼と一緒に食事をしただけです。特別なプログラムはありませんでした。ただ,そうしたら彼の助けになると信じたので,しました。教会なし,プログラムもなし。でも,それをしなかったら,多分その次の奇跡もなかったかもしれません。それがなかったらどうなったか,わたしには分かりません。モルモン書の中には,小さなことを通して大きなことが行われると何回も書いてあります(1ニーファイ16:29;アルマ37:6-7。教義と聖約64:33も参照)。わたしはそれを信じています。

    わたしの見る限りでは,ほとんどの再活発化の働きはそうです。そのためにプログラムは必要ありません。どのようにして助けることができるか祈れば,主は答えてくださいます。どうしたらいいか,感じるときに行えば,いつも祝福を受けます。すべての人が教会へ戻るわけではないでしょう。でも主の計画は広く,わたしはただその一部を担うにすぎません。もしかしたらわたしたちの働きを通して,その人は教会について再び考えるかもしれない,また次の人の働きをを通して,教会へ戻ることになるかもしれません。だから自らの誇りのためや賞賛を受けるためにではなくて,ただ,動けば,御霊に感じるままになすべきことをすれば,いつも祝福を受けます。

    だから強くお勧めしたいことは,今なすべきことについてお祈りして尋ねること,また御霊によってすべきだと感じたことをすぐに行うことです。そうすればわたしたち活発会員は,みんな行動し,働きますから,必ず日本の教会が発展すると,わたしは証いたします。」

    エバンズ長老は言う。「あるステーク大会でエバンズ姉妹は,アルマ書17章を使って話しました。ラモーナイ王はアンモンに,ずっとレーマン人と一緒に過ごしたいかと尋ねたのです。『そこでアンモンは王に,「はい。しばらくこの民の中で暮らしたいと思います。死ぬまでここに住むかもしれません」と答え』ました(アルマ17:23)。日本に来た当初の難しく寂しい気持ちは,会員たちの助けまた御霊の助けによってこういう気持ちに変わりました。それは祝福でした。アメリカに帰ることは,今,わたしよりも姉妹にとって難しいこととなっています。わたしたちの本心を言えば,日本から離れたくないですね。主の御心ですから,もちろん従いますけれども,日本で夫婦で過ごした7年間の経験は絶対に忘れません。」そう述懐し,エバンズご夫妻は涙を流しながら日本との別れを惜しんでいた。◆