リアホナ2008年10月号 イスラエル通信4

    イスラエル通信4

    イスラエルの水辺を行く新約聖書の福音書によれば,イエス・キリストの伝道活動のほとんどはガリラヤ湖の周辺で行われた。ガリラヤ湖からヨルダン川,そして死海へと続く道は,重要な水源地として聖書には描かれている。

    【ガリラヤ湖】

    【ガリラヤ湖】

    エルサレムの北約100kmに位置するガリラヤ湖の周辺は,南岸を除いて切り立つ崖に囲まれている。北側から水源であるヨルダン川の水が流れ込む淡水湖である。東岸の上に標高900mの肥沃なゴラン高原が広がる地形のため,崖から吹き下ろす冷風によって激しい嵐が湖面に引き起こされることもある。イエスと弟子たちがガリラヤ湖を渡ってガダラ地方へ向かう途中,湖上で突然の嵐に襲われたのは,このような地形的な理由による(マタイによる福音書8章23-27節)。ガリラヤ湖の周辺は水も豊かで年中温暖なので,観光地として人気があるだけでなく,バナナやマンゴーの栽培も行われ,イエスの時代と同じように漁業も営まれている。

    【カペナウム】

    【カペナウム】

    ガリラヤ湖の北西の湖畔にあるカペナウムは交通の要所でもあり,繁栄した町だった。イエスは郷里のナザレで教えを伝えたが受け入れられなかった。「慰めの村」という意味を持つカペナウムにイエスは赴き,そこが伝道の活動拠点となった。「それから,イエスはガリラヤの町カペナウムに下って行かれた。そして安息日になると,人々をお教えになったが,その言葉に権威があったので,彼らはその教えに驚いた。」(ルカによる福音書4章31-37節)。

    【ヨルダン川/ヤルデニット】

    【ヨルダン川/ヤルデニット】

    パレスチナの地を北から南に流れる最も長い川がヨルダン川である。ガリラヤ湖から流れ出て死海に注ぐまで,川幅は27~30mで深さは1~3m。イスラエル領内で唯一観光客がヨルダン川に入浴できる場所がガリラヤ湖南端のヤルデニットで,水深が浅いため水は濁っているが,イエスがバプテスマを受けたヨルダン川でバプテスマを受けようと多数の巡礼者が訪れる人気の場所になっている。ほかのヨルダン川流域はヨルダン王国との国境であり,そこへ行くにはイスラエル軍の許可が必要となる。

    【エリコへの道】

    【エリコへの道】

    ヨルダン川が死海へ注ぐ手前のヨルダン渓谷に,ヨシュアが最初に征服した町エリコ(標高マイナス252m)がある。エルサレム(標高774m)からエリコへ下る道は標高差が約1,000mの高く切り立った岩山にできた亀裂で,ワディ・ケルトと呼ばれ(ワディとはヘ

    ブライ語で枯川のこと),45kmの長さに及んでいる。外国人はこの枯川に沿って,昔さながらにハイキングを楽しむことができる(エリコはパレスチナ自治区内にあるため,イスラエル人は入ることができない)。日射しが厳しく夏は40度を超えるため,冬場の方がハイキングに適している。

    エリコには誘惑の山がある。イエスが断食,瞑想し,悪魔の誘惑を受けたとされる場所である。イエスが40日間の断食を終えると,「次に悪魔は,イエスを非常に高い山に連れて行き,この世のすべての国々とその栄華とを見せ」た(マタイによる福音書4章8-11節)。標高370メートルの誘惑の山の頂上からはエリコの緑豊かなすばらしい景色や町並みを眺めることができる。現在,山の中腹には修道院がある。

    【死海】

    【死海】

    地球で最も低い(海抜マイナス397m)ために,塩分濃度が海水の10倍に濃縮されている死海。人の身体が簡単に浮いてしまうことで有名である。実際に,腰のあたりまで水に入ると,湖底から足が離れて体が浮き始める。現在,水が死海に流れ込むまでに工業または農業用水として大量に採取されるため死海への流入水量が不足して,毎年約1メートルほど湖面の水位が下がっている。このままでは死海が枯れてしまう恐れがあり,死海の水位を維持するために,紅海から運河を掘って死海への海水引き入れを試みるプロジェクトが立ち上がっている。死海は,ガリラヤ湖を経てヨルダン川が注ぎ込む終着点であり,水が流れ出ていく川はない。◆